投資用マンション相続の手続きと流れ|保有・売却の判断基準を解説
- 【時系列】手続きの流れと絶対に守るべき期限
- 【判断基準】「そのまま保有する」か「売却する」か
- 【費用】投資用不動産の相続税と、手続きの諸費用
一般的なご自宅の相続とは違い、投資用マンションの相続には「ローンの残債確認」や「入居者・管理会社への対応」など、特有の複雑な手続きがあります。
そして、手続きを進める中で決断する必要があるのが、「このまま運用を続けるべきか、それとも売却して現金化すべきか」という点です。
この記事では、投資用不動産のプロの視点から、投資用マンションの相続手続きと、「保有するか」「売却するか」の判断基準をご紹介いたします。
【結論】
投資用マンションの相続で
まず知っておくべきこと
ご自宅の相続と第一に違うのは、「賃貸経営も一緒に引き継ぐ」という点です。そのため、本格的な手続きに入る前に、以下の「3つの期限」と「3つの確認事項」を押さえておきましょう。
把握しておきたい「3つの期限」
行うべき手続きの期限を過ぎてしまうと、意図せず負債を引き継いだり、税負担が大きくなったりする可能性があります。
- 【3か月以内】
負債の調査と「相続・放棄」の判断 - 【4か月以内】
被相続者の所得税申告(準確定申告) - 【10か月以内】
誰が継ぐかの決定と「相続税の申告・納税」
保有か売却かを決める3つの確認ポイント
今後相続したマンションをどうするか決めるため、まずは以下の状況を確認しましょう。
① ローン残債と「団体信用生命保険」の有無
そのままローンを引き継ぐことになるのか、保険の適用でローン残債が無くなるのかを確認します。
② 毎月の収支(黒字か赤字か)
管理会社へ連絡し、家賃から経費を差し引いた「手元に残る実際の収支」を確認します。
③ 契約内容
将来の売却の条件に影響する可能性がある「サブリース契約」などがないか確認します。
ここからは、これらの期限に合わせた具体的な手続きの流れや、「保有するか・売却するか」の判断基準について、さらに詳しく解説していきます。
相続発生から完了までの
手続きの流れと期限
投資用マンションの相続では、期限の管理が重要です。まずは「いつまでに・何をすべきか」の全体像を把握しましょう。
具体的な手続きの進め方は後ほど解説しますので、ここでは「3つの期限」と「過ぎてしまった場合の注意点」についてご紹介いたします。
まず「誰が引き継ぐか」を決める
手続きを進めるにあたり、まずは誰が物件を引き継ぐのかを決めます。故人が残した遺言があればそれに従うのが原則です。
遺言が無ければ相続人全員による「遺産分割協議」で話し合って決めることになります。
すぐに引き継ぐ人が決まらない場合でも、手続きを進める必要があるため、代表者を1名立てておくことが望ましいです。
【3か月以内】
負債の調査と「相続・放棄」の検討
▼ やること
亡くなった方のその年の家賃収入と経費を計算し、税務署へ申告・納税します。
注意点!
3か月を過ぎると原則として「単純承認」したとみなされ、残っているローンなどの負債も含めて、すべて引き継ぐことになります。
負債が資産を上回る場合は、この期間内に家庭裁判所へ「相続放棄」や「限定承認」を申し立てるか検討が必要です。
ただし、「相続放棄」を行うと、ご自宅や現預金などプラスの財産も一切受け取ることができなくなるので、慎重に判断する必要があります。
【4か月以内】
被相続者の所得税申告(準確定申告)
▼ やること
亡くなった方のその年の家賃収入と経費を計算し、税務署へ申告・納税します。
ポイント!
経費を計算するこのタイミングで、「毎月の実際の収支状況」が数字で明確になります。
この客観的なデータをもとに、「売却するか・保有しつづけるか」の話し合いを進めるのがおすすめです。
【10か月以内】
誰が継ぐかの決定と相続税の申告・納税
▼ やること
「遺産分割協議」を完了させ、原則として相続税を「現金」で一括納付します。
注意点!
期限までに遺産分割がまとまっていないと、税負担を軽減できる特例(小規模宅地等の特例など)が適用できず、一時的に相続税の負担が大きくなる可能性があります。
相続した投資用マンションの
「保有・売却」判断基準
相続手続きの前に、「このマンションを保有し続けるか、売却するか」の今後の方針を決定しておくことをおすすめします。
これは今後のライフプランや収支に直結する大きな決断となります。まずは、それぞれのメリットとデメリットを比較してみましょう。
| 保有:そのまま運用 | 売却:手放して現金化 |
|---|---|
|
▼ メリット ・毎月の家賃収入が入る ・将来の売却益に期待 ・インフレに強い |
▼ メリット ・まとまった現金が手に入る ・遺産分割がしやすい ・経営リスクからの解放 |
|
▼ デメリット ・空室・修繕等のリスク ・トラブル対応のコスト ・災害リスク |
▼ デメリット ・継続的な家賃収入が消滅 ・売却時の税金(譲渡所得税) ・希望額で売れないリスク |
個人の状況に合わせて、さらに詳しく3つの選択肢を見ていきましょう。
選択肢A:保有して賃貸経営を続ける
立地や条件が良く、安定した家賃収入が見込める「黒字物件」であれば、そのまま保有するのも有力な選択肢です。ただし、継続するには以下の見極めが重要になります。
「実際の収支(キャッシュフロー)」を計算する
表面的な家賃収入だけでなく、管理費、修繕積立金、固定資産税などの経費を差し引き、毎月手元にいくら残るかを計算します。
将来の「大規模修繕リスク」に備える
建物が古くなれば、外壁塗装や設備交換などの修繕費がかかります。将来的に持ち出し(赤字)にならないか、長期的なシミュレーションが大切です。
収益改善のポイント「管理会社の見直し」
保有を決めたら、現在の管理会社の手数料や集客力を見直す良い機会です。条件に合う会社へ変更することで、収益状況が改善するケースもあります。
選択肢B:
売却して現金化する(換価分割)
「現物不動産のままだと公平に分けにくい」「賃貸経営の手間は避けたい」という場合は、売却して現金で分ける「換価分割」が円満な解決策になりやすいです。
適正な価格で売れるタイミングを見極める
不動産の価格は変動します。まずは、投資用不動産に精通した信頼できる不動産会社に査定を依頼し、「現在の適正な市場価格」を正確に把握することから始めましょう。
市況を見極め、売却に最適なスケジュールを一緒に立てられるパートナーを見つけることが成功の鍵です。
要注意:
サブリース(家賃保証)付き物件の場合
サブリース契約が付いている物件は、買主側の自由度が低くなるため、市場価格より評価が下がったり、売却活動が難航したりする傾向があります。
中途解約には違約金がかかるケースも多いため、売却前に必ず契約内容を確認しましょう。
売却時の税負担を和らげる「取得費加算の特例」
相続税を納めた方が、相続開始から「3年10か月以内」にその物件を売却すると、収めた相続税の一部を費用として計上でき、売却時の税金(譲渡所得税)を軽減できる特例があります。
選択肢C:ローンが上回る場合は
「任意売却」も視野に
投資用マンションの売却において、「物件の査定額」が「ローン残債」を下回るオーバーローン状態や、 家賃収入がローン返済や経費を賄えず自己資金を持ち出す「赤字」の場合、通常の売却ではローンを完済できず、行き詰まってしまうことがあります。
このような状況で検討したい選択肢が「任意売却」です。
「どうすればよいか分からない」と悩んでいる間に返済が滞ると、最終的に金融機関によって物件が差し押さえられ、市場価格よりも安価な「競売」にかけられる恐れがあります。
競売になる前に、金融機関と交渉し、市場価格に近い価格での売却を目指す「任意売却」を検討することで、残債の負担を軽減することが可能になります。
保有するか売却するか迷ったら
「将来の修繕費まで含めると本当に黒字になるのか」「今は売却に適したタイミングなのか」
相続した投資用マンションを保有すべきか売却すべきかの判断は、物件の正確な査定と将来の収支シミュレーションが欠かせません。
弊社「日本不動産投資パートナーズ」では、お客様の物件状況に合わせた「保有・売却の比較」をシミュレーションし、最適なプランをご提案いたします。
迷われた際はぜひ一度、弊社の無料相談をご利用ください。
方針決定後の具体的な手続き
「このまま保有する」か「売却して手放す」かの方針が決まったら、具体的な手続きに移ります。
ここでは、前述の「10ヶ月の期限」に間に合わせるために行う、具体的な3つのアクションを解説します。
ステップ1:遺産分割協議書の作成
ご家族で決めた方針を、法的に有効な書面にまとめます。名義変更や売却の手続きを進めるために必要となる重要な書類です。
▼ ポイント
「誰が単独で相続するのか(現物分割)」、または「売却して現金で分けるのか(換価分割)」を明確に記載し、全員の実印を押します。
マンションの「共有名義」は慎重に
ごきょうだいなどで持分を分ける「共有名義」にすると、将来的に売却や大規模修繕をしたい際に全員の同意が必要になり、意見が合わずトラブルに発展するリスクがあります。
可能であれば単独名義にするか、売却して現金で分ける方法をおすすめします。
ステップ2:
法務局での相続登記(名義変更)
書類ができたら、マンションを故人から新しい所有者へ名義を変更します。すぐに売却して手放す場合であっても、まずは相続人への名義変更は必須です。
ご自身で行うことも可能ですが、手続きが複雑なため司法書士に依頼するのが一般的です。
注意:2024年4月から「相続登記」が義務化
不動産を相続したことを知った日から「3年以内」に正当な理由なく登記をしないと、10万円以下の過料の適用対象となる可能性があります。
また、遺産分割協議によって誰が相続するか決めた場合は、「遺産分割が成立した日から3年以内」となります。過去の相続分も対象となるため注意が必要です。
【チェックリスト】相続登記に必要な書類
書類集めには時間がかかるため、早めに動き出すのがポイントです。司法書士に依頼する場合は、以下のうち何が必要かをまずは確認しましょう。
※「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の場合は、事前に家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります。 「公正証書遺言」の場合は検認不要で、そのまま法務局へ提出可能です。
ステップ3:
融機関・管理会社などでの名義変更
法務局での名義変更が完了したら、関係各所の手続きも忘れずに行いましょう。
金融機関
ローンを引き継ぐ場合は、新しい名義人で審査を受ける「債務者変更」、団信で完済される場合は「抵当権抹消」を行います。
火災・地震保険
名義変更を忘れていると、万が一の火災や災害時に保険金がスムーズに支払われない恐れがあります。速やかに保険会社へ連絡しましょう。
管理会社
今後の家賃の振込先や、修繕の相談窓口を新しいオーナーに変更する手続きを行います。
併せて、入居者(借主)へ「オーナー変更と家賃振込先の変更」を通知する必要がありますが、基本的には管理会社がお知らせの配布などを代行します。
投資用マンション特有の
諸費用と相続税評価
手続きを進めるにあたって「いくらかかるのか」という費用の全体像をご紹介いたします。
【費用一覧】
投資用マンション相続で必要になる費用
相続税以外にも、名義変更の手続きなどで様々な費用がかかります。事前に全体像を把握しておきましょう。
| 費用の種類 | 金額の目安・計算方法 |
|---|---|
| 相続税 |
財産が基礎控除額を超えた場合のみ発生 ※基礎控除額= 3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額(土地+建物)×0.4% |
| 司法書士報酬 | 約5万〜15万円程度 |
| 書類の取得実費 |
数千円程度~ ※相続人の数や取得が必要な戸籍の通数によって変動 |
投資用マンションは相続税が
安くなりやすい
上記の相続税について、投資用マンションは現金やご自宅を相続する場合に比べて、相続税の計算上、評価額が大きく下がる(税金が安くなる)特例や仕組みがあります。
人に貸していると評価額が下がる
「入居者がいるため、オーナーが自由に使えない」という理由から、ご自身で住んでいるご自宅よりも評価額が約30%ほど差し引かれて計算されます。
なお、ずっと空室のままの部分は原則として対象外ですが、退去に伴う「一時的な空室(すぐに次の入居者を募集している等)」であれば適用されます。
土地の評価額が半分になる特例
一定の条件(申告期限まで売らずに保有し続ける等)を満たすと、マンションの土地部分の評価額がさらに50%減額される「小規模宅地等の特例」が使える可能性があります。
まとめ
本記事では、投資用マンションの相続手続きについて、不動産会社の視点でご紹介いたしました。
投資用マンションの相続は、ご自宅の相続とは異なり、「毎月の家賃収入」や「入居者への対応」、そして「投資用ならではの複雑な税金計算」が伴うため、判断に迷うポイントが多くなります。
相続する方の負担を減らし、スムーズに手続きを進めるためのステップは以下の4つです。
- まずは「3つの重要な期限(3ヶ月・10ヶ月・3年)」を把握する
- 遺言書の有無を確認し、誰が引き継ぐか(遺産分割協議)を話し合う
- 名義変更の手続きを進める前に、「保有」か「売却」かの運用方針を決める
- 決定した方針に合わせて、法務局での相続登記などを確実に行う
この順番で進めることで、意図しない税金の発生や親族間でのトラブルを未然に防ぎ、投資用マンションならではの「税金が安くなるメリット」を最大限に活かすことができます。
迷ったら投資用不動産のプロにご相談を!
「このまま保有したらいくら手元に残る?」「今の適正な売却価格は?」「自分の場合は税金が安くなる特例が使える?」
投資用マンションの相続には、現在の収支状況や将来の修繕リスクを含めた「正確なシミュレーション」が欠かせません。
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